シリーズ・水銀規制の動向(2) 「ボタン電池の水銀規制と達成状況をみる」

28日10 2015年

電池も製造や輸出入が厳しく規制される


特定の水銀使用製品の製造を原則禁止することなどを柱とする「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」(水銀汚染防止法)は、一部を除き水俣条約の発効日から施行されます(水銀汚染防止法及び水俣条約については、シリーズ・水銀規制の動向(1)「蛍光ランプはどの程度規制される?」を参照)。


水銀汚染防止法の規制対象となる製品のうち、今回は、蛍光ランプと同じく「水銀添加製品」としてあげられている、ボタン電池に対する規制の中身を検証します。


ボタン電池には水銀を含む種類も


電池及び電池器具メーカーの業界団体である一般社団法人電池工業会(BAJ)によると、国内の電池業界は早くから水銀対策に取り組んでいます。1992年に乾電池の水銀ゼロ化を達成し、1995年には水銀電池の生産と販売を中止しました。


国内では2013年現在で年間約8トンの水銀が使用されていて、ボタン電池が占める割合はその12.5%ほどです。ボタン電池には、①アルカリボタン電池、②酸化銀電池、③空気亜鉛電池(空気電池)、④その他―があり、水銀を含むものと含まないものがあります。

表は、これらの電池に対する水俣条約による規制と、環境省が政令案で示した国内規制の方針、そして国内における達成の状況をまとめたものです。


表 ボタン電池の種類と水俣条約による規制、達成状況など

ボタン電池の種類
水俣条約による規制
環境省政令案
達成の状況
①アルカリ電池(用途:携帯ゲーム機、玩具、歩数計、電卓、防犯ブザー、家電リモコン他)

・2020年に製造・輸出入を廃止

・水銀含有量基準の設定無し(水銀ゼロが求められる

2020年に廃止(条約と同じ)

・国内生産(1社)については水銀ゼロ対応済み

・他社は国内外から調達しており、国内市場向けも有水銀品の販売有り

・現状達成できていない事業者あり

②酸化銀電池(用途:腕時計、ラジオ、電卓、カメラ、各種リモコン、医療機器他)
・水銀含有量2%未満のものは適用除外

水銀の含有量が全重量の1%以上のもの(条約より強化)

2017 年に廃止(条約より前倒し)

・国内、海外向けともに条約の規制値を満たしており、対応済み
③空気亜鉛電池(用途:補聴器他)
・水銀含有量2%未満のものは適用除外

水銀の含有量が全重量の2%以上のもの

2017 年に廃止(条約より前倒し)

・水俣条約の規制値は対応済み

完全な水銀ゼロ化は困難

④その他の電池
・水銀含有量基準の設定無し(水銀ゼロが求められる)

2017年に廃止(条約より前倒し)

・国内で販売されているものは水銀ゼロを達成済み

環境省、経済産業省資料より作成


完全な水銀ゼロ化が困難なものも


アルカリ電池について、水俣条約は水銀含有量の基準を設定していません。つまり、水銀を完全にゼロにすることが求められます。国内では1社のみが生産しており、無水銀対応済みですが、国内外から調達して販売している分については達成できていない事業者もあり、国内市場にも有水銀製品が出回っています。こうした状況を踏まえて、中環審答申はアルカリ電池の廃止期限を条約通り2020年とする方針を示しており、政令案の施行日は2020年12月31日となっています。


酸化銀電池と空気電池について、水俣条約は「2%以上」という水銀含有量基準を設定しており、それ未満のものは条約による規制の対象外です。しかし、酸化銀電池について政令案は、条約の規制よりも厳しい「1%以上」の電池を対象にするとしています。また、廃止期限は2017年と条約よりも前倒し、政令案の施行日は2018年1月1日となっています。


政令案で空気電池の基準値が条約と同じになっている理由は、高温多湿な日本の気象条件下においては特に補聴器での用途などを想定すると品質や安全の確保が難しく、完全な無水銀化が困難であるためです。


◆おわりに

 

ボタン電池の生産量は、最も多い酸化銀電池が2013年の実績で8億個を切り、水銀使用量は0.2トン弱。国内の電池業界全体でも0.28トンほどになっています。

一方、ボタン電池の輸出入の状況をみると、酸化銀電池の輸入量が751万2,000個、輸出量が4億8,620万7,000個で、空気電池は輸入量が4648万1,000個、輸出量が157万2,000個です。アルカリ電池の輸出入量は公表されていません。

また、市場に流通しているボタン電池の中には、中国など海外で生産されたものに加えて、さまざまな機器にビルトインされているものが多くあり、実態の把握が難しい部分があるのが現状です。


次回はその他の品目に対する規制について検証します。

 

BAJは、廃棄物処理法に基づく環境大臣許可を受けて、使用済みボタン電池の回収事業を行っています。詳しくはBAJのホームページ「ボタン電池回収にご協力ください」をご覧ください。


◆参考リンク

一般社団法人電池工業会(BAJ

水銀添加製品としてのボタン電池の状況(経済産業省、pdfファイル)

「水銀に関する水俣条約を踏まえた今後の水銀対策に関する技術的事項について(合同会合第二次報告書(案))」に関する意見募集(パブリックコメント)の結果及び環境大臣への答申について(環境省)

「水銀による環境の汚染の防止に関する法律施行令案等」に関する意見募集(パブリックコメント)について(環境省)